2025年3月29日・30日の2日間にわたり、山形県酒田市・日吉歯科診療所研修室にて、第2回JOF交流会が開催されました。当日は、小雪がちらつく花冷えの気候となりましたが、研修会場は定員いっぱいの59名の参加者の熱気に包まれていました。
交流会のプログラムは、熊谷崇先生による特別講演を皮切りに、日吉歯科診療所勤務の中里先生の発表、75期育成セミナー参加医院の発表、そして100症例にチャレンジした会員歯科医院の発表と続きました。
各地から集まったそれぞれ異なるキャリアと立場を持つ参加者にとって学びの多い、刺激的な内容となりました。
また、交流会では各企業の方々も交え、オーラルフィジシャンとしての懇親を深める場ともなり、充実した二日間となりました。
開催概要 Day 1
「人生100年時代に向けて ~8020からKEEP28へ~」
・JOF会員は敬称を省略しております
開催概要 Day 2
オーラルフィジシャン育成セミナー75期 参加医院発表
・JOF会員は敬称を省略しております
フォトレポート Day 1
◉趣旨説明 JOF理事 宮城 和彦
本家本元の八丁味噌を知らず、模倣され広まった味噌を本物だと思い込んでいる──。
深いコクも、力強い旨味も知らないまま、「これが八丁味噌か」と思われてしまっている。これが、いま現実に起きていることです。
そして、MTMもまったく同じ道をたどろうとしています。
表面だけをなぞった模倣に触れ、奥行きも本質も知らないまま、「これがMTMか」と誤解されてしまう。だからこそ、交流会で本家本元のMTMに触れてほしい。
きっとあなたの中で、何かが大きく変わるはずです。
◉講演
「人生100年時代に向けて ~8020からKEEP28へ~」
熊谷 崇(日吉歯科診療所 理事長)
熊谷崇先生からは、ご自身の50年にわたる臨床経験を振り返り、歯科医師人生を第1期、第2期、第3期と区分し、それぞれの時期における主な学びや活動についてお話しいただきました。
今回は、これまでとは趣向を変え、「事業承継」を中心としたお話となりました。
いかに歯科医院に価値を付加し、次世代へ引き継いでいくかという点に力点を置いた内容でした。
50年の歯科医師人生を歩まれた熊谷先生だからこその、説得力に満ちたお話でした。
また、米国歯科医師会(ADA)や一部州の歯科医師会が取り組んでいる事業承継支援の仕組みについても言及がありました。
アメリカでは、「歯科医院は売却できて当たり前」「後継者探しは歯科医師会に任せる」という文化が根付いています。
それに対し日本では、院長が一人で悩み、結果として閉院に至るケースが少なくありません。
アメリカでは、継ぎたい人と継がせたい人を仕組みの中でマッチングすることが一般的になりつつあり、オーラルフィジシャン医院でも、こうした事業承継支援の体制を整える必要性を強く訴えられました。
◉会員発表
中里 圭佑(日吉歯科診療所 勤務医)
中里先生には、JOF会員フォーマットに従ってご発表いただきました。
ご自身が初期治療から携わった患者さんに対する歯科医師の視点から、単にPCR値が何%以下かという数値だけでは口腔内の健康を語れないこと、短縮歯列に基づく補綴設計の考え方、さらには咬合にまで踏み込んでご発表いただきました。
◉懇親会・企業講演
株式会社four dentalsは、真の患者利益を追求する予防型の歯科医院や、それを求める患者の双方にとってより良い環境を作るために、患者の健康アウトカムを中心に据えたバリューベースドヘルスケア、従来の歯科医療体制を革新する ”歯科版” カイザーモデルの実現を目指しています。従来の保険制度と自由診療の枠を超え、予防医療を重視した新たな歯科医療システムの未来像を提案させていただきました。
交流会では、各テーブルの代表者に、予防医療・MTMに取り組む動機や、現状の課題、そしてこれからの展望について語ってもらいました。
なかでも印象に残ったのは、歯科大生の息子さんと一緒に参加された理事の晝間先生の場面です。抱負を語ったのは息子さん。晝間先生は、息子さんの言葉にうなずいたり、ふと下を向いたりと、どこか落ち着かない様子で、見守る親の想いがひしひしと伝わってきました。一方、息子さんは父親とは対照的に、淡々とした口調で語り、未来に向かって静かに情熱を燃やしているような、そんなクールさを感じさせました。
フォトレポート Day 2
オーラルフィジシャン育成セミナー75期 参加医院発表
◉座長 JOF理事 佐藤 長幸
◉天満コンセプトP歯科
◉はら歯科クリニック
◉あんざい歯科医院
◉垂水さだまさ歯科・矯正歯科
75期育成セミナー参加者にとっては、交流会は最終発表の場でもありました。
皆さん、メディカルトリートメントモデルに沿って初診から初期治療と丁寧に取り組んでおり、とても印象的でした。
発表者からは「症例数は増えてはいるけれど、患者にうまく伝えられずに形骸化している」という声も聞かれましたが、それに気づいていること自体が大事な一歩だと感じました。
お昼休みのディスカッションでは何かヒントが得られたようでうれしかったです。ぜひ来年の交流会では、100 症例発表のサーティフィケートにもチャレンジしてほしいです。会場をご提供くださり、ご講演もしてくださった熊谷先生には感謝いたします。
100症例発表・サティフィケート授与
◉せせらぎ⻭科クリニック
◉五條⻭科医院
◉サティフィケート授与
「100症例の症例報告」——医院の歩みと臨床の深みを映す発表
3月30日、酒田JOF交流会にて「100症例の症例報告」が発表されました。
この報告は、MTM(メディカルトリートメントモデル)を実践する歯科医院が、オーラルフィジシャンとして高い理想を追い求める過程において、その到達点のひとつを示す“マイルストーン“です。恣意的な症例選択を排し、再評価1以上までMTMプロセスを遂行した100人以上の患者データをもとに、医院としての取り組みとその定着状況を客観的に共有します。
この取り組みの原点には、若手歯科医師の育成に尽力する熊谷崇先生の一言があります。
「100人くらい診ていくと、見えてくるものがある」
この言葉をきっかけに、現場の“気づき“を形にし、次の一歩へとつなげる企画が生まれました。
当日は、オーラルフィジシャンの原点とも言える日吉歯科診療所にて開催。
宮城県・せせらぎ歯科クリニック、神奈川県・五條歯科医院の2医院がそれぞれの100症例を発表し、JOF畑理事長よりサティフィケートが授与されました。
会の終了後には、せせらぎ歯科クリニックの川村先生の補綴症例のディスカッションが行われ、さらに熊谷崇先生からは日吉歯科における貴重な補綴症例の紹介もあり、参加者にとって多くの学びを得る機会となりました。
「100症例の症例報告」は、単なるデータの共有にとどまらず、臨床のリアルな軌跡と医院の成長をともに分かち合う場です。
この取り組みは、参加するすべての歯科医療者にとって、次のステージへと進むヒントと勇気を与えてくれることでしょう。
◉まとめ
熊谷 崇(日吉歯科診療所 理事長)
◉JOFセミナー年間コースの案内 JOF理事 宮城 和彦
◉交流会参加医院の傾向
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