開催概要 Day 1
Philosophy Part1:哲学を学ぶ「スウェーデンの歯科医療哲学を語る」
(マルメ大学歯学部カリオロジー科教授・スウェーデンう蝕治療ガイドライン議長)
西 真紀子[コーディネーター]
(NPO法人「最先端のむし歯・歯周病予防を要求する会(PSAP)」理事長)
田中 利典[質問応答コーディネーター]
(川勝歯科医院)
- 岩上 早苗 様(通訳)
- 大竹 喜一 様(株式会社オーラルケア代表取締役社長)
ethos Part2:哲学を広める「先達の哲学を広めて武器にしよう」
開催概要 Day 2
logos Part3:知見を活かす「社会的課題を知見で解決しよう」
pathos Part4:価値を伝える「地域に情熱をもって価値を伝えよう」
フォトレポート Day 1
◉入場
◉開会
◉会場の様子
◉講演
スウェーデンの歯科医療の哲学について
(マルメ大学歯学部カリオロジー科教授・スウェーデンう蝕治療ガイドライン議長 ダン・エリクソン)
予防歯科先進国として知られるスウェーデンがいかにして現在のような体制を作り上げたのか、歴史や文化的背景、法律などを紐解きながら紹介がなされました。スウェーデンでは、キャピテーション・システム、SKaPa、ナショナルガイドラインなど、国を挙げた予防、健康増進施策がさらに先へと進んでいます。施策が奏功する背景に、スウェーデン人の性質が深く関わっており、哲学とは知恵を愛することで多くの新しい事実が明らかになってもその根本は変わらないことを伝えていただきました。
歯科医療哲学という難しい内容にも関わらず、ジョークを織り交ぜながら進んだ講演は、楽しみながら腑に落ちる、素晴らしいものでした。質疑応答では会場とオンラインから多くの質問が寄せられ、熊谷崇先生(山形県開業)からのコメントもあり、日本における予防歯科医療の方向性を占う貴重な講演となりました。
(本稿は「ザ・クインテッセンス」2022年12月号の記事に基づく)
文章:みやぎ歯科室 宮城和彦
◉Surprise
日本の予防歯科を動かした功労者の表彰
株式会社オーラルケアの大竹社長と通訳の岩上早苗様を表彰し、記念品を贈呈しました。海外からMetro West Ortho Plus Perioの宮本貴成先生からメッセージをいただきました
岩上さんには1980年代初頭より、熊谷崇先生の勉強会で通訳を務めていただいております。その後も海外から講師が招かれるたび通訳を担当してくださり、数え切れないほど山形県酒田市に通われました。そして今日に至るまで、オーラルフィジシャン医院のチームミーティング、マルメ研修をはじめ、国内・国外問わずサポートしていただいております。
◉昼休み・企業展示
◉講演
「日本の歯科医療を変える」 そのために我々は何をするのか
(山梨県甲斐市開業 M,デンタルクリニック松野歯科 松野英幸)
新しい時代は世界のグローバル化をもたらし、そのプラットフォームの上で私たちも活動しています。2020年のCovid-19の蔓延は地球規模のアジェンダとなり、それを期に人々の価値観は大きく変わり確実性だけが唯一の拠り所となりました。日本においては人口減少・少子高齢化・財政逼迫などによる社会保障制度存続の危機を抱え、先行きの見えない不安な社会の中で子供たち、孫たちに対し、如何に責任を果たすのか問われています。今回の私のプレゼンテーションでは、その責任の果たし方をお示し致しました。
私共が熊谷先生から学んだことは、社会への献身・利己主義との闘いそして次世代の守護を信条とするオーラルフィジシャンの在り様です。そしてその名に相応しい取り組みをお伝え致しました。この度の私のプレゼンテーション再聴講のご要望を複数頂戴しております。折を見て再度ご提供できる機会を設けさせて頂きます。
◉講演
治療型医院引き継ぎからオーラルフィジシャンクリニックへの転換
(神奈川県寒川町開業 つぼ川歯科医院 坪川正樹)
治療型の医院から引き継ぎ開業をし、そこから予防型の診療室へ転換を進める立場の代表として発表をした。
転換にはさまざまな事柄に関して概念の大きな変更が必要であるが、医院全体の考え方は一朝一夕には変わらなかった。一つ一つの事柄に対し、理由と目標を明確にし、それが浸透する時間をじっくり待つことが必要である。当時はできなかったが、現在はOPセミナーで学んだ哲学を明確な言葉として伝えることができており、院長としてはまだまだ未熟であるが、スタッフに迷惑をかけ、支えられ、なんとかここまでくることができた。一番必要なものはスタッフと向き合う覚悟であったように思う。
一般的に口の中に自信を持てない、歯科に期待の感情を持てない人が多い中で、その考え方を変え、長い人生のために口の中の健康を貯蓄できるという希望をもたらすのはOPクリニックの使命ではないか。発表により、引き継ぐべき哲学を再認識することができた。
◉講演
OP医院として、今後の歯科医療のあるべき姿を探って
(北海道函館市開業 福田歯科医院 福田幹久)
私は、松野先生の座長のもと、『OP医院として、今後の歯科医療のあるべき姿を探って』というタイトルで登壇させていただきました。その中で、福田歯科医院の新しい取り組みへの思いと実際をお話しさせていただきました。
発表の中で私が特に伝えたかった事は、今後の口腔の健康は、当院の仮説である『二重ドミノ理論』に基づいて考察を深める必要があり、これをコントロールできるような予防歯科を実践していく必要があるという事、そして、そのようなモデルはオーラルフィジシャンのような歯科医療従事者によって形作られなくてはならないという事で、当院での実例とともにお話しさせていただきました。
今回は、東京汐留の富士通本社の会場には多くの参加者が集まった上にオンライン形式でも配信されるハイブリッド形式であり、非常に盛況な会となりました。この度は、非常に貴重な機会をいただけました事を、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
フォトレポート Day 2
◉講演
医療従事者の知見と企業と自治体の実践力で予防歯科を社会実装する
(東京都西東京市開業 アップルデンタルセンター 畑慎太郎)
本パートでは、企業の皆さんにはJOFというプラットフォームに、商品開発と健康経営の2軸で参加していただきたいという旨をお伝えしました。根底にあるのは歯科治療、メンテナンスの「質」です。
富士通Japan株式会社 ヘルスケアソリューション開発本部 デジタルヘルスソリューション統括部(以下富士通Japan) 武久様より、ファーストペンギンとしての4つの取り組み(質の見える化、自治体連携、企業保険者連携、社内実践)を紹介していただきました。
藤里さん(富士通Japan)より、診療のアウトカムデータを多施設で集積・発信することにより、健康経営を目指す企業やその社員など社会へのシナジーをもたらし、患者さんの信頼感が増し、新しいファン(家族や友人)を連れてきたくなるような、診療室づくりにつながるような、好循環を生み出していきたいという、熱のこもった講演でした。
今出さん(富士通Japan)と浅川さん(パナソニック株式会社ビューティ・ヘルスケア事業部)萩野先生(北海道神恵内村診療室)より、企業共創の取り組みと村まるごと予防歯科という、2つの事例を紹介していただきました。富士通のソリューションの力を活かしOPの先生方と連携しながら、企業ならではのアプローチにより、予防歯科の価値を社会に広めるべく、仲間づくり共感者づくりをしていただいています。
伊藤さん(富士通健保組合)より、富士通として、社員一人ひとりが心身ともに健康で、いきいきと働くことができる環境づくりを本気で目指していることを、様々なデータを用いて紹介していただきました。
最後に晝間先生(立川市開業)より、利益を追求しなければならない企業が挑戦してくれているのだから、私たち歯科医も自分ゴト化して情報を公開し、社会に伝えていく姿勢を呼びかけ、本パートを総括していただきました。
(東京都立川市開業 OPひるま歯科矯正歯科 晝間康明)
本パートではJOFの活動理念である、社会連携による予防歯科の社会実装に向け、医療従事者と企業・自治体それぞれから講演していただきました。
本パートを通じて、個々のOP歯科医院では果たすことが困難である予防歯科医療の社会実装について、各医院が自分ごととして捉えて取り組むことにより、実現の可能性が高まることが伝えられたと感じます。富士通の皆さんがファーストペンギンとして取り組まれていることで、勇気もいただけました。参加者からは、「日本の保険制度、歯科医療の未来を今一度真剣に考える機会になった」「クラウドでアウトカムデータを出すことで予防歯科の社会実装につながる可能性を実感した」との声をいただき、JOFだからこそできる取り組みである予防歯科の社会実装への評価や、今後のJOFの活動に対する期待とも言える熱気を感じることができました。
(富士通Japan株式会社)
富士通からは予防歯科の社会実装を目指した各種取り組みについて説明しました。一つは来年3月リリース予定の新・歯科クラウドサービスについて。その軸は、”予防歯科医療の質(アウトカム)の見える化”と”チーム医療・質の高い患者教育”の下支えです。従来機能の改善と併せて刷新を予定しています。次にコトづくりでは、Panasonicさんと連携した新たな付加価値づくり、また北海道神恵内村との”村まるごと予防歯科”に向けた活動をご紹介。私たち富士通は、ソリューションを活かし自らが予防歯科の実践に取り組みながら、その価値をさらに高め広げるべくオーラルフィジィシャンの皆さんと共に挑戦し続けます。
(パナソニック株式会社 ビューティ・ヘルスケア事業部 浅川様)
我々のオーラル事業の目指す姿は、「お客様(患者様)と専門家(歯科)が我々の製品で繋がり、一人ひとりに寄り添うオーラルケアサービスを提供すること」です。361/365日のホームケアの重要性に着眼し、当社IoT電動歯ブラシ「ドルツ」と「アプリ」の検証評価を5つの医院様で実施。有効性を実感いただきました。JOF様・富士通様・当社の3者の強みを融合することで、目指すべく健康社会の実現ができると確信しました。繋がるホームケアで予防歯科の更なる発展と一人ひとりが健康的で美しく、活動的で生き生きと暮らせる。そんな人々の幸せ実現のために、これからも取り組んで参ります。
(北海道神恵内村 神恵内村歯科診療所 萩野司先生)
北海道神恵内村は人口789人という小さな自治体で、主要産業はウニ漁です。漁の時は水中めがねを歯でくわえてウニを採るため、丈夫な歯が必要不可欠です。今回富士通Japanヘルスケア事業部とJOF畑先生、福田先生とのご縁をいただき、6月には村民向け予防歯科セミナーを開催しました。アンケートの結果、予防型歯科医院に通いたいとの回答が90%あり、予防歯科に対するニーズ・期待値を実感しました。これからは若い漁師の28本を守り、0歳からの予防歯科を、小さい自治体でもできる予防歯科に転換するウエ~ブを起こします。今回幾重ものご縁をとおして発表の機会をいただきお礼申し上げます。
(富士通健康保険組合 伊藤常務理事)
富士通健康保険組合では、熊谷先生の取り組みに学び・共感し、富士通グループ社員と家族に「予防歯科セミナー」を開催するなど、意識啓発に取り組んでいます。2023年度には、「富士通クリニック(神奈川県川崎市)」の歯科部門を「OP歯科」に展開することを予定しており、社内実証を重ね全国にも取り組みを広げていきたいと考えています。JOFの皆様と連携しながら取り組んでまいりたいと考えており、ご支援よろしくお願いします。
◉講演
地域市民の口腔の健康状況を世界一にする そのために我々は何をするのか
(徳島県美馬市開業 川原歯科医院 川原博雄)
JOFが目指すのは、生涯にわたる口腔の健康「Keep28」である。そのための手段として、MTMを行うのであるが、MTMを実践すれば結果が出るわけではない。結果を出すために、様々なデータを収集分析し、改革と改善を繰り返し、提供する歯科医療の質を向上させていくのである。そのためには、診療所の高い総合力が必要となる。総合力の向上に伴って、口腔の健康の価値は、患者を通して地域社会に伝わるのである。我々が地域社会でKeep28を目指すためには、「Sakataモデルの実践」に記されている「結果を示す診療所」となることであり、多くの診療所の本気の挑戦をバックアップしたい。
Keep28 Dentistryへの我々の挑戦に、多くの参加者は明るい未来を見たのかもしれない。講演中の参加者の熱い視線と真剣な表情がとても印象的であり、終了後に多くの参加者に囲まれた。たくさんの質問や感想が閉館まで寄せられ、参加者のKeep28 Dentistryへの意識の高さと、担当理事としての責任の重さを感じた。
◉講演
地域にメインテナンスを根付かせるために
(栃木県栃木市開業 早乙女歯科医院 早乙女雅彦)
地域にメインテナンスを広げそして根付かせるために私達は地域への啓発活動を積極的に行うとともに、来院される患者さんに信頼していただけるような予防を中心とした医院づくりを進めて来ました。これらの取り組みを行うことにより多くの患者さんにメインテナンスに通っていただき、そしてメインテナンスにおいてある程度は結果を出せる医院となりました。また地域においてもメインテナンスが少しずつ一般的なものになりつつあることを実感できるようになって来ました。
以上のような内容で発表させていただきましたが、参加者の皆様が真剣に聞いてくださる様子を感じ取ることができ、また講演後はいくつかの質問をいただきました。私達の行って来た取り組みがオーラルフィジシャン医院の活動に少しでも参考になったのであれば幸いです。
そして素晴らしいコーディネーターを務めていただきました山根延仁先生に感謝致します。
◉講演
地域市民の口腔の健康状況を世界一にする そのために我々は何をするのか
(秋田県雄勝郡開業 柴田歯科医院 柴田貞彦)
全国的にもむし歯が多く、少子化が進む地域において、予防・メインテナンスに通う子供が皆無の状態から地域への啓発活動と親子予防により多くの子供がメインテナンスに通院し、DMFも全国平均を遥かに下回る結果が得られたことを示した。また親子予防は親の歯に対する意識を変え、親子共々口腔の健康を獲得することのできる取り組みであり、その来院エリアは年々広がってきており、人口が激減する中においても増患傾向にあることについても触れた。このような成果を得ることができたのはアウトカムデータをもとに改善を繰り返してきた結果であり、またそのアウトカムデータの向上が私たちのやりがいと自信となり地域に情熱をもって伝える力にもなったことも述べた。
登壇した際、会場の参加者からもKeep28に対する情熱が伝わってきたが、その情熱を感じながら地域に情熱を伝えたお話をすることができ、私にとっては至福の時間となった。貴重な機会に感謝したい。
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